理由を教えて欲しかった


私が子どもの頃の父は、とてつもなく恐ろしい存在で、急に不機嫌になったり、急に怒鳴ってきたり、ぶち切れポイントがわからない挙句に、しょっちゅう機嫌が悪くなっていたので、いっつもびくびくしておりました。

父はよく『ハキハキと元気な声で挨拶をしなさい。』と言っていて、でも私は内気な性格でしたから、それがなかなかできませんでした。
自分ではけっこう頑張って元気よく声を出したつもりでも、父から見たらそうではないらしい…。元気よく挨拶しろって、しょっちゅう言ってくる父…。自営業だったので、小学校から帰ってくるとよくお客さんが来ていて、父とお茶を飲んだりしていました。そのたびに、挨拶するのが憂鬱だったあの頃…。

でも私が、反抗期・思春期に入り…。父のことを避けるようになって、極力顔を合わせないようにしていて、怖いっていう存在でもなくなってきて…。
父はそれでもたまに、酔った勢いで『挨拶はちゃんとしなさい』と、私に言いたいけど面と向かって言えないから、独り言っぽくぶつぶつとつぶやいていました。

その言葉を聞くたびに、私はとってもいやーな気持ちになって、内心『挨拶なんかするもんか』と思っていました。実際、ご近所さんにも家に来るお客さんにも、ろくに挨拶をしませんでした。そうやって父に反抗していました。



思い返すと、挨拶をしなさい、と言われるたびに、私は幼心に、『どうして?』って、思っていたんですよね。どうして、大きな声で挨拶をしなくちゃいけないのかが、本当に、分からなかったのです。
でも『どうして?』と聞いたら、父がまた不機嫌になりそうで、聞いたことがなかったんです。理由がわからずに、強制させられたなら、そりゃまぁ、反抗期には反発したくなりますわねえ。


もうひとつ。父は、お鍋の蓋の置き方にやたらと口うるさくて、これまた急に不機嫌になることがありました。お鍋の蓋はこのように↓、持ち手を下にして、置かないといけない、と。

でも、たまに、こう↓持ち手を上にして、置きたくなるときがあるんですよ。お鍋があつあつで、湯気たってるときなんて、蓋もあっつあっつで、とても持ち手を下にして置けないから。子どもの手の皮は薄いですからね。大人よりももっと、熱さがダイレクトに手に伝わります。

それで熱くてこうして↓置くと、とたんに不機嫌になって、私はびくびくして、おろおろするのでした。母が後で言うんです。「お父さん、鍋の蓋の置き方にうるさいから、気を付けなさいね。」と。
でも思春期に入ってからは、挨拶と同様に、私は反抗するようになりました。わざとこっち↓の置き方をするわけです。わ・ざ・と!!(笑)

これもやっぱり、なぜ、そうしなければいけないのか?を教えてもらったことがなかったんですよね。どうして?って怖くて聞けないまま、ずっと理由が分からないまま…。

 

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理由もセット、で納得できる。

教えてほしかったな、と思いますよね。あの時、理由も一緒に。どうしてそうしないといけないのかを。不機嫌になるだけじゃなくってさ。
理由もセットで、不機嫌になるなら。怒られるなら、まだ、良かったかな。
分からないまま、怒られたくない一心で、相手の顔色を窺って行動していた私の心には、しこりが残り、ウン十年経った今でも、覚えているのだからね。


今なら、分かるんです。父がどうしてそう言っていたのか。
きっと、こういう理由だったんだろうなあと。

父は、そう。きっと、コミュニケーションが苦手だったんですよ。
不機嫌な態度で示し、相手に察しろよ、と。そういう形しか取れなかったんでしょう。
そして私もその血を受け継いで、ずっと、態度で察してよ、を続けていたわけで。

だけど、今の私は、理由もセットで説明ができるし、そうやって言葉でちゃんと伝えることの大切さを知ってる。
父がしていたこととは違う形の…より良いコミュニケーションの取り方を、勉強中だからね。


私ならこう言う

Q.ハキハキと元気よく挨拶しないといけないのはどうして??

挨拶された人が気持ちが良いからだよ。そうすると相手からも、気持ち良く挨拶が返ってくるかもしれなくて、お互いに気持ち良くなれるんだよ。
つまり、明るい挨拶は、人を元気にする力を持っているってこと!

でも、無理やり大きな声を出せば良いというものじゃないよ。大きな声を出すのが難しいと感じたなら、にこっと笑顔で、挨拶してみてごらん。笑顔も、人を明るい気持ちにさせてくれるんだよ。できることをやってみて。きっと、明るい挨拶って良いよねって、思える日がくるからね。

Q.鍋の蓋は、取っ手を下にして置かないといけないのはどうして??

取っ手を上にして置くと、蓋のフチにテーブルやシンクに付着している汚れが付くかもしれないからだよ。 それに、テーブルに置いた場合は、熱いと蓋の焼け跡が付いてしまうかもしれないんだ。
蓋が熱すぎたら、テーブルにふきんを敷いて、その上に蓋を置いてもいいし、ミトンを使って蓋を持つのもいいんじゃない?
持てないときは、持てないよ~!って言ってヘルプを出すのもアリだよ!なんでも自分でやらなくちゃいけないってことはないからね。



父が亡くなって今年で11年。
コミュニケーション勉強中の私を、空から見守っていてくれてるかな~。

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