本当に言いたかったことは、それじゃなかった。

わたしがまだ結婚していた頃の…次男が生まれて、子育てがめちゃめちゃしんどかった頃の話…。
元夫にブチ切れたことがありました。

 


今から約12年前…。

二人の息子の子育てにへとへとの毎日。
そんなある日の休日。

元夫は自室にこもって、一人でゲームをしたり、昼寝をしたりして過ごしていた。
いつもの休日の光景だ。

わたしは二人の小さな息子の世話をしながら、夕食を作っていた。

 

子育てを手伝ってほしい、といつも思っていたけれど、平日は仕事で大変なんだから休ませてあげなければ、という気持ちもあり、自分のイライラを一生懸命抑えていた。

手伝って、と言ったらムッとするだろうな、とも思っていた。
いちいち喧嘩をしたくなかった。

 

夕食が出来上がる頃に、あー良く寝たと言わんばかりの様子で自室から出てきた。
そして、何も言わずに箸を持ち、何も言わずに、食べ始めた。

 

いただきます は?

いただきますって言わないの?


そこで、わたしは、ぶちっと切れた。

 


そして、叫んだ。


わたしは家政婦じゃない!!!!


と。 いきなり、怒鳴った。



彼は驚いた。幼い息子たちもびっくりしていた。
わたし自身も驚いた。

そんなことを言うつもりはなかった。
でも、無言で食べ始めた彼を見たら、思わず言ってしまったのだ。

 



そして、彼もキレた。


家政婦だと思ったことなんて一度もねーわ! と。




機能不全家族


わたしは機能不全家族で育った。

両親はしょっちゅう喧嘩をしていた。
喧嘩は決まって、父と母が晩酌をする夕食中にはじまった。

雲行きが怪しくなりはじめると、小学生のわたしは早々に食事を済ませて二階の自分の部屋に閉じこもる。けれども部屋にいても、怒鳴りあう声は聞こえてくる。
ハラハラドキドキしながら、静かになるのを待っていた。

そのうち静かになり、ほっとしたのもつかの間、トントントン…とわたしの部屋をノックして、部屋に入ってくるのは母だ。

『さゆちゃん、ちょっと聞いてよ。』 母はそうして父の愚痴をわたしに話しはじめる。泣いている日もあった。

 

 

わたしの心も泣いていた。もうやめて、と耳をふさぎたかった。
わたしの心の悲鳴は、父にも母にも、届かなかった。

 

 

そうして大人になった。

 

そうして結婚をした。

 

父と母のような関係にはならないぞ、と心に誓った。
子どもの前で喧嘩はしない、と誓った。

喧嘩をしたら不幸になると思っていた。
彼を怒らせてはいけない、と思っていた。

聞いてほしいことは、いろいろとあった。でも言わなかった。



そんな中、わたしは家政婦じゃない!!という言葉が口から飛び出たのだ。

ただ、わかってほしかった。

当時のわたしは、分からなかった。

本当に言いたかったことは、それじゃなかったんだってこと。

 

家政婦じゃないって、そんなこと、自分自身が知ってる。
彼がわたしを家政婦だなんて、思っていないことも、分かっていた。

 



ただ、わかってほしかったのだ。
わたしのこの大変さ、この辛さを、わかってほしかった。


次男をおんぶしながら、長男を抱っこする。この大変さを、わかってほしかった。
そうして買い物に行き、子どもが泣き出し、冷たい目で見られているんじゃないかと、ハラハラドキドキする気持ちを、分かってほしかった。


夕飯を作るとき、子ども達がまとわりついてくる大変さを、分かってほしかった。
くたくたになって寝ているときに、泣き声で起こされる辛さを、分かってほしかった。

公園に行ったらどんなママさんがいるんだろう、とドキドキする。
その緊張感をわかってほしかった。


子育ての悩みを話せる友達がいない、その孤独をわかってほしかった。


あなたの母親がしょっちゅう遊びにきて、気を遣う大変さをわかってほしかった。


息子が発熱して、病院で長く待たさているときの…いつ、ぐずりだすかという不安、いつまで待たされるんだろうという焦りをわかってほしかった。



夫である、あなたにわかってほしかった。

子育てを手伝ってくれなくてもいい。
あなたも仕事で大変だろうから。


ただ、言ってほしい。

子育てって大変だよね。よくやってくれてるよ、ありがとう。と。

わたしを見て、心を込めて、言ってほしかった。

 

 

 


父と母のような夫婦になりたくなかった。
仲良し家族に憧れていた。
家族みんなであははと笑いあえる、温かい食卓にしたかった。

けれども現実は、
仲良しであたたかい家庭は程遠かった。

 

 

離婚する前から、心理療法を受けていて、
何度も何度も共感していただいた。

気持ちをわかってくれる人が一人いるだけで、こんなにもほっとすることを知った。

 

そして、ようやく、わかってあげられるようになった。

 


わたしは家政婦じゃない!!!!
と叫んだときの、わたしの気持ちを。
「ああ、そうだったんだなあ」と、わたし自身がわかってあげられるようになった。

 

そして。

彼がずっと自室にこもっていた理由も、
想像できるようになった。

わたし側にも非があったのだ。


喧嘩ばかりしていた父や母の気持ちも、
想像できるようになった。



家族みんな、それぞれに、わかってほしかったんだな、ってことを
わかってあげられるようになった。


そして、真っ暗闇の中で一人うずくまっていた、
わたしの心に陽だまりが生まれた。

 

 

 

 


悲しかったね。

寂しかったね。

苦しかったね。

辛かったね。

怖かったね。

不安だったんだね。

そう気持ちをわかってもらえるだけで
たった一人、そういう人がいるだけで、

きっと、真っ暗闇で一人うずくまっているあなたの心に
陽だまりが生まれる。


だから、わたしは、あなたの気持ちをわかりたい、と思う。
そして、あたたかな陽だまりを感じてほしいな、と思う。

 

 

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