20年近く昔の話ですが、人間関係が嫌になって転職をして、新たな職についた私。
新しい勤務先のメンバーは、天下りでやってきたという、仕事は部下に丸投げの、還暦越えのおじいさん上司と、32歳の女性Aさん、そして、26歳の女性Bさんでした。
そこに私(当時23歳)が加わりました。 おじいさん上司が仕事をしないものだから、独身女性のAさんBさんがすべての仕事を請け負い、てきぱきと働いていました。 見た目からして気が強そうで、仕事をバリバリこなすキレッキレのAさんと、Aさんよりはおっとりしていて話し方も優しい…けど、言いたいことははっきり言う、Bさん。
Aさんは、厳しい先輩でした。 ちょっと間違えたらビシッと注意されるんで、私はびくびくしていました。 Aさんは、おじいさん上司にもケンカ腰で歯向かうし、不機嫌を態度にモロ出すし、まじ怖え人でした。そんな言い方するか?!とよく思っていました。
でも仕事はやっぱりおできになるから、Aさんがいなきゃ回らないだろうなーっといった感じで、Aさん中心の職場でした。
とにかく、Aさんが気が強くて怖いので、働きはじめてすぐから、Aさんが「マジ嫌いな人」になっていました。
救いはBさん。私がAさんにビシッと注意された後に、Bさんが私をさりげなくフォローしてくれる事がありました。 なので、Bさんの事は好きでした。
AさんもBさんの事が好きみたいで、Bさんにはアタリはきつくありません。どうやら二人は同時期に入社したようで仲良しです。年はAさんの方がけっこう上だけど、お昼休みも友達みたいに二人で楽しそうに話をしています。
Bさんの事は好きだけど、Aさんと仲良しだから、「あの…Aさんてどんな人なんですか…?ちょっと怖くて…」なーんて相談も、できずにいました。
Aさん、まじこええ、まじ嫌い・・・!辞めたい・・・!
毎日そう思いながら働いていましたが、私が仕事を覚えてくるにつれて、Aさんの態度も入社当初より温和になっていきました。私を仲間の一人として見てくれるようになったようです。
とはいえ、性格がキツイことは変わりません。 私への態度が多少優しくなったとて、こちとら最初のイメージが悪すぎて、そうそう好きにはなれません。
そんなある日。Bさんと私の二人きりになった時のこと。
Bさんが突然こう言いました。
美月さんて、Aさんに似ているよね!!
・・・はい???
嫌いな人に似ているなんて信じたくない!
Aさんと私が、似ている…??
Bさん、一体何を言っているんですか? 私はあんなに気が強くないし、あんなに人にビシバシと言わないし、あんなに目が吊り上がっていないし、あんなにあんなに・・・
うわああーーーーーーーーん(号泣)
ショック!ショックすぎる!!!
ものすごく嫌でした。あんな人に似ているだなんて・・・!!
その後も、ことあるごとに、Bさんは私に言うようになりました。
美月さんはAさんに似ている…と。
やめてーやめてくれー聞きたくない―!! それ以上は言うな。何も、申すな…。
Bさんの口にガムテープを貼ってしまいたい。おぬし、これ以上申したら斬りつけるぞなもし!!みなまで言うなああああーーーーー!!!
しかし実際、似ていると言われてもなんとリアクションしていいか分からなくて、「そうですか?」くらいしか言えませんでした…。
・・・そんな20年も昔の事を、先日ふと思い出したんですよね。
で、今そう言われたら、どうリアクションするかな~?って想像したんですね。
きっと今なら、「うげーまじかよ!嫌だなア!」と思いながらも、「どういうところが似ているんですか?」って聞くだろうな、と思いました。
私は当時、Aさんと私が似ている部分は、Aさんの短所・・・私が嫌っている部分だろうと思い込んでいたのです。 性格がキツイ、意地悪、上司に歯向かう、真面目一辺倒…。
Bさんから、私もそういう人だと言われた!って解釈したんです。
で・も!!
そんなこと、Bさんは一言も言っていないんですよね。 Bさんがどういう部分を似ていると言っていたのか、詳しく聞かなかったのですから…。
どこが似ているのかちゃんと確認したら、もしかしたら
・Aさんと髪質が似ている。
・Aさんと背格好が似ている。
・Aさんと話し方が似ている。
・・・だったかもしれないのです。いやいや、普通、似ているって言ったら、性格を指すでしょうよ!!と囁く私もいるのですが、でも、確認していないのですから、分かりません。
だいたい、Bさんは何度も私にAさんと似ているって言いましたが、私がそれを嫌だと感じているなんてちっとも思っていなかったと思うんですよね。嫌味で言っていたという感じでもなかったし。
AさんとBさんは仲良しでしたから、BさんはAさんの良いところを見て、私と似ているって言ってくれていたかもしれないのです。
いやいや。あのAさんだよ?! 長所が似ているっていう意味なわけないやん!!
・・・って囁く、もう一人の私がいるんですが、でも、確認していないのでね。Bさんの本意は永遠に分からないのです。
もし仮に、私が嫌だなって感じていた部分で似ていたのだとしても…そっか、そういう面が私にもあるのかあ…と凹みながらも受け入れると思います。 ああ…そうですか…と、夕暮れ時の公園のベンチでひとり、黄昏ながら凹みますけどね。
まあそういうわけで、”実際のところは分からない” と、自分の思い込みなのか、事実なのかを冷静に見極めることが今は出来るようになったんだな…と、20年前の私よりも多少なりとも成長していることが分かったのは良かったです。
似ている部分があるかもなあ
ちなみに、その職場には実は1年弱しかいませんでした。というのも、あまりにも天下りのおじいさん上司が仕事をせずに丸投げしてくる事に、AさんとBさんがブチ切れて、退職届を突きつけて、突然辞めてしまうという出来事があったんです。
その数日前にAさんとBさんから、「実は、私たちは辞めることにしました。 私たちが辞めた後は仕事が山積みで地獄だから、美月さんも一緒に辞めた方が良いよ」と退職を勧誘され… 地獄が待っている事にビビった私もまた、言われるがままに退職したのでした…。 今振り返ると、もうちょい私なりにやれることがあったんじゃないか、という気もしますが、それは今だから思う事。
それ以降まったくAさんとBさんと連絡は取っていませんが、今頃どうしているのやら。
今Aさんと再会したら、私と似ている部分を発見できるかもしれませんね…。冷静に…冷静に…うーん、冷静に、は無理かもなあー似ていると言われたら、まあ受け入れるけどやっぱやだなー(笑)