初めて母の手を引いて歩いた日

先月、母と日帰り旅行に行ってきました。

母とは一緒に暮らしていないうえに、お互いに仕事をしているので、まあまあ近距離に住んでいるわりには会う頻度はそんなに多くなく、旅行に行くことも今までなくて…多分20年ぶりくらいの二人きりの旅行だったと思います。

 

・・・いや、旅行に今まで行かなかったのは、仕事がどうの、同居がどうの・・・という話ではなく。
このHPでも私の生い立ちを書いていますが、私はアダルトチルドレンで、母のことを、自覚はしていなかったけれど・・・私がこんなに苦しくて不幸なのはお母さんのせいだ!と恨んでいたんですよね。

 

だから、二人でどこかに行きたいとか、そう思うこともなかったのですね。

でも心理療法を受けて数年が経ち…。今は、心から「お母さん、大好き」と思っている私がいます。
そうした矢先、母から「旅行に行かない?」との誘いがありました。二つ返事で「行きたい!」という私がいました。

 

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二人で手をつないで歩く

母は70代半ばになり、年齢と共に足腰が弱ってきています。

山の自然散策がメインだったので、旅先では、ゆっくり歩きました。 途中、大きな石がごろごろとあって歩きにくい箇所もあって、私が手を差し出して、手を引いて歩きました。

手をつなぐのが、はじめ、とても照れ臭くって、なんだかこそばゆくって…ソワソワと落ち着かなくて。

でも、時間とともに、手をつなぐことに慣れてきて。
歩きやすい道になって、手を引く必要がなくなっても、そのまま手をつないで歩きました。 

母の手の力も、最初よりも段々と力がこもっていきました。 ”嬉しい”っていう気持ちが、手から伝わってくるようでした。

ずっとずっと、私の方が手を引いてもらう側だったのに、いつの間にかこうして、私が母の手を引いているなんて、なんだか切ないなあ。でも嬉しいなあ・・・。 

母も同じ気持ちだったのか、「さゆちゃんに手を引いてもらう日がくるなんてねえ・・・」って、しみじみと言っていました。

真っ青な空。 堂々と、静かにそびえたつ山々。
鳥が自由に飛んでいて。
澄んだ川は、太陽の光でキラキラと輝いて。
さらさらと心地の良いせせらぎが聞こえてきます。


本当に本当に、美しい風景でした。

二人で、綺麗だね、最高だね、って何度も言いました。

ああ、幸せ。
娘とこんなところに来れて、幸せだ。
もう、いつ死んでもいいよ。

って、母は言いました。

私はそれを聞いてまたちょっと切なくなって、でも、そのくらい幸せなんだなって思って、嬉しくなって…。 

”切な嬉し状態” です。(造語)


でもねえ・・・私はやっぱり、お母さんにずっと、生きていてほしいなあ。
私が死ぬまで、生きていてほしいなあ。





数日後、母はまた、今度は●●に行かない?と、次の日帰り旅行の計画を立てていました。
友達と行くよりも、さゆちゃんと行きたいんだよ、って。


母の手を引いて、二人で歩ける日があと何回あるのかな。

お母さんには、ずっとずっと、生きていて欲しいけど。
でも、順番でいけばね、親が先に生まれた分、先に死んでいくのだから、それは仕方がないんだよなあ。

お互い元気でいる間に、今までずっと感じることが出来なかった、母と娘の・・・二人きりで過ごす、満たされた、幸せな時間を、思い出を、沢山作りたいなぁ。

 

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